非中央集権と仮想通貨の行方

2022年3月4日
インターネット プログラミング・開発 仮想通貨 宗教 社会問題 自己啓発

皆さん、こんにちは。

本稿執筆時、ロシアのウクライナ侵攻による戦争状態が日々ニュースとして流れていますが、世界勢力の均衡や政治経済の緊張という意味では注視すべき問題ではあるものの、一方で、例えば、南スーダンでは人道的な問題が日々起こっていますし、飢餓だけでなく死者も増え続けているにもかかわらず、ウクライナほど注目されないのは何故なのかと疑問に感じざるを得ません。

もちろんウクライナでも死者は出ていて、市民がロシアの侵攻や攻撃に怯えながら先の見えない行く末に不安を抱いて生活するのは、我々日本人のように平和な国に住んでいる身分だと、なかなか想像できない惨状かとは思います。

そんな混乱状態が世界で増加すると雨後の筍のように現れてくるのが、将来の不安を煽った陰謀論、あるいは、宗教の勧誘や、偽の投資話だったりします。

私はいっとき宗教について関心があり少し勉強していた時期があって、その中でも最も身近で興味深かったのが、エホバの証人として知られる「ものみの塔」です。彼らの布教活動のひとつには訪問勧誘がありますので(正確には「勧誘」ではありませんが)、皆さんも「聖書の話を聞いてほしい」と家にやってこられた経験があるかもしれません。エホバの証人の訪問活動は神の言葉を伝えることであり、神の言葉を多くの人に伝えることが信仰の証となるため、彼らは文字通りエホバの言葉を伝える「証人」としての活動をおこなっています。もっとも近代まではこうした布教活動も一般的な行為とみなされていましたが、いまどきの感覚だと「怪しい」と思う方が一般的でしょう。

エホバの証人としてキリスト教を信仰している方々は全ての人が聡明なわけではないので、中には世間的な印象のように親の影響で信者となった人もいますし、聖書のことをそこまで論理的に理解していない人もそれなりにいます。しかし、私が彼らの話を聞き、活動を知って驚嘆したのは、神の言葉、つまり「聖書」研究の地道さと緻密さです。

当時(私が関心を持った時)はインターネットがさほど普及していませんでしたので、その研究内容を知ることができたのは、新世界訳の聖書、冊子「ものみの塔」と「めざめよ」、そして「創造」についての書籍です。これらは、信者の方に「関心がある」と言えば、無料で配布してくれます。その後、お金を取られたり、入信を迫られるようなことはありません。

なぜ聖書を挙げたかと言うと、旧約聖書と新約聖書を原典に作られているどの宗派の聖書も、それぞれの解釈により表現に差異があったり、場合によっては内容がやや異なっていたりするからです(例えば「神」の訳は「エホバ」「ヤハウェ」「ヤーウェ」など)。新世界訳は、信者である識者達が日々聖書について研究し、その注釈も含めアップデートされており、必要があれば聖書そのものの改訂・配布もなされ、上記の冊子などで情報がシェアされます。現在は彼らのウェブサイトに全ての情報が掲載・更新されており、「ものみの塔 オンライン・ライブラリー」なるものもありますので、興味がある方はご覧になってみてください。私は信者ではありませんが、聖書のことを調べる際に時々使うと非常によくできているので、彼らの勉強熱心さに感心します。

私が彼らの布教活動につきあっていた(聖書の話を聞いていた)時の信者の一人は某進学校の歴史教師で、流石に歴史に精通している方だけあり非常に鋭い考察と説得力でしたが、後々私が色々と勉強していくに従い、「賢いのに結局は盲信してしまっているのだな」と思い返したことがあります。

神「יהוה‎」(ヤハウェ)は、今のところ物理的に見ることができませんし、もしかすると本当に存在するかもしれませんので否定はしませんが、聖書や神による創造を強く信仰している方は、キリスト教や聖書がいかに歪曲され都合よく解釈されてきたかを少し調べるべきだと思います。例えば、数学者であるリチャード・ドーキンスの「さらば、神よ 科学こそが道を作る」などは非常に易しく書かれていますので、そうしたことを考えるきっかけになるでしょう(ドーキンスは有名なハードコア無神論者ですが、不思議なことに彼自身が信者では無いかと思うくらいキリスト教や聖書について精通しています)。

ものみの塔についての話が長くなってしまいましたが、最近、エホバの証人と同様、非常に宗教的な現象だなと思って眺めているのが、ビットコインマキシマリストと呼ばれているような人々や、非中央集権化を声高に叫んでいるインターネットのアクティビスト達です。

ビットコインマキシマリストとは、仮想通貨や暗号資産と呼ばれるものの一つであるBitcoinの未来を頑なに信じている人たちのことを言いますが、彼らは「中央集権化された国家により通貨が発行される既存の経済は限界があり、これからは特定の誰かに支配されない自由な経済となる基盤がBitcoinであって、Bitcoinが全ての経済を置き換える」と信じています。もちろん、現在の資本主義社会には限界があり、通貨や経済の仕組みはよりデジタルに置き換えられていくことでしょう。

Bitcoinを始めとするデジタル通貨を真面目に開発・推進している方々の努力は、実際、国家の経済の仕組みに影響し、社会やテクノロジー基盤の一助になっているかとは思いますが、仮にBitcoinが世界の一大主要通貨となったとして、その時には、きっと今よりも貧富の差が激しくなっているはずです。何故ならば、マキシマリストを始めとする、Bitcoinを買い煽りしている人たちは、既に多くの割合を占めるBitcoinを保有しているからです。Bitcoinは、円やドルと違い、支払い、送金時には、0.000000001BTCのような小さな単位でも使用することができますが、それまでBitcoinを買い貯めてこなかった人たちは、クジラと呼ばれる大量保有者の保有する以外の残りのBitcoinでやりくりしなくてはいけません。しかし、円やドルのような法定通貨システムが全世界で突如崩壊して、Bitcoinとすら兌換できなくなったとしたら、Bitcoinを保有していなかった人たちはどうなるのでしょうか?クジラ達が非保有者に配布してくれるとでも言うのでしょうか?Bitcoinは、インターネットが前提ですから、世界経済が崩壊した際、世界中が大混乱してインターネットが止まり、オンライン送金できなくなる可能性もあります。もちろん「そんなことは起こらないだろう」と言う前提で明るい未来を描いているわけですが、これもキリスト教や聖書が、「いずれ神がやってきて裁きを与えて、敬虔に信仰を行った神の証人だけが再び永遠の命を授けられる」と言っている話に似ていないでしょうか?

私は、Bitcoinを始めとする仮想通貨を否定はしていません。むしろ、私自身もお金を儲けるためにトレードしていますから、短期的な投機目的、あるいは、投資商品として長期保有しておくのも良いと思います。

技術的な側面ではデジタル通貨が社会やテクノロジーの発展の一部を担うのは間違いありませんが、Bitcoinのようなデジタル通貨(もっと具体的に言えばブロックチェーンを使ったネットワーク)が「非中央集権的」な世界を作ると言うのは、やや眉唾な話でしょう。もちろん、仕組み的には、国家のような特定の権力ではなく、ネットワークに参加している人々(コンピューター)がPoW(Proof of Work)と呼ばれるような仕組みでデータの正当性を証明していますので、その意味で「非中央集権的」とも言えますが、結局、そのインフラは国家や大企業が敷設したネットワーク、もっと言えば、物理的な回線を使用しているわけですから、「非中央集権」を叫ぶ人々でそれらを収奪するか、あるいは、非中央集権的ネットワークを推進する人々で新たに構築しなければ、それは完全な「非中央集権」とは言えないはずです。

なんにせよ、独裁国家の国民や植民地化された国家が反逆を行って「独立」を勝ち取った歴史はありますので、そういう意味では既存の支配体制や不都合なシステムから脱すると言うコンセプトは良いことでしょう。しかしながら、先に私が「宗教的」と表現したのは、いわゆる「恐怖ビジネス」のようなスタイルで簡単に煽られてしまうのが現代の情報社会であり、「非中央集権化」などと叫ぶ前に、まずは個々人が情報に錯乱しないスキルを身につけるべきでは無いか、つまり、少しでも知性を磨くべきでは無いかと思ったからです(過度な盲目という意味での「宗教的」という表現で、「心の拠り所としての宗教」を否定しているわけではありません)。

主にトレードの世界などで耳にする「FUD」という言葉がありますが、これは「Fear(恐怖)」「Unsertainty(不確実)」「Doubt(疑問)」の略で、はっきりしない疑わしい情報を流して不安にさせ、人々を扇動するプロパガンダ的なやり口のことを言います。昨今であれば、SNSやYouTubeなどの動画コンテンツなどでも、こうした方法を暗に利用したやり方でマーケティングが行われていますが、インターネット以前よりも情報の劣化とコピーが早い現代情報社会においては『「宗教的」にならないことこそが「非中央集権的」ではないのか』と思った今日この頃です。


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