意識は作ることができる!
映画「ボクたちはみんな大人になれなかった」を見て

2021年11月10日
映画・ドラマ 自己啓発 読書

皆さん、こんにちは。

私は、“ながら見”も含めてドラマや映画をよく見ますが、日本の作品を見ることは多くありません。理由は、クオリティ的な問題と、予告編等を事前に見ても魅力的に感じる作品が少ないからです。

とは言え、海外の作品だからといって良い作品ばかりというわけでもなく、昨今は撮影機材や映像編集環境の高機能化・低価格化により多数の作品が早いサイクルでリリースされるため駄作も多く、作品数から見れば、制作コストの高かった時代の方が良作の割合が大きかったように思います。

そんな中、オンライン&テクノロジー全盛の時代に覇権を握ったNetflixは、自社のスタジオやプロダクション、そして、潤沢な予算により、スポンサーに囚われない独自の作品を制作し、多数のヒット作を生み出しています(駄作もあるのですが)。

掲題の「ボクたちはみんな大人になれなかった」は、ウェブメディアの連載から生まれたヒット小説を原作とする映画で、こちらもNetflixにより制作された作品です。

そもそもこの手の作品は、タイトルや予告編で内容が見えてしまうので大概スルーしてしまうのですが、Netflixではオススメ作品が自動再生されるため否応なく目に入ってしまうので、ふと画面を見た瞬間、映画の中の見慣れた渋谷の街が気になってしまい、再生を開始してしまいました。

ややネタバレになってしまうため、これから見たいと思っている方は先に見ることをオススメしますが、おおまかな内容を説明すると「都内に住む主人公が、なんとなく40代の大人になってしまった現代から回想的に自身の体験を遡り、その間に出会った女性や仲間たちとの、甘酸っぱく、そして、痛い思い出を辿る」といったストーリーです。

舞台のほとんどは渋谷や原宿、六本木や新宿といった街で、キーとなる渋谷丸山町のホテル街、タワーレコードやラフォーレ原宿といった場所は、今も昔もさほど変わりは無いのですが、VFXの技術により過去の様子がリアルに再現されていて、よくある「回想シーンに現在の建物や看板が映り込んでしまっている」ということが無いのは感心します。

邦画をあまり見ない私がこの作品をネタにしたのは、その舞台の中心である渋谷や原宿が私の思い出を引っ張り出したからです。特に主人公の佐藤誠と加藤かおりが出会い遊んでいた90年代の渋谷や原宿は、私の一番思い出深い時代の渋谷と原宿で、ラフォーレ原宿前や丸山町のラブホテル(笑)などは、終始懐かしさが込み上げてくる映像でした。

私は特に森山未來さんを好きではありませんが、主人公である彼の演技はもちろん、「全裸監督」でも注目された伊藤沙莉さんのナチュラルな演技も見ものですので、90年代半ばに渋谷や原宿で遊んでいた方にはぜひオススメします(笑)。

ところで、この作品を見て私と同じ「懐かしさ」を感じる人もいるでしょうし、全く共感できない人もいると思いますが(むしろ共感できない人の方が多いと思いますが)その差は一体なんでしょうか?

当然、「経験や記憶の差」という話になりますが、楽しさや悲しさ、あるいは、懐かしさといった感情〜情動は、いわゆる「意識」が引き起こすものだと想起されます。

これまで、そして、現在でも、多くの人がこの「意識」を「魂」や「霊」のような肉体と別にある人間固有の「なにか神聖なもの」のように思っていますが、私は最近「意識」は細胞や遺伝子などと同じく、単に物理的な肉体が作り出しているものだ思うようになりました。

私は本を探していると、つい脳や意識に関する書籍ばかり購入してしまうのですが、フランスの認知神経科学者 スタニスラス・ドゥアンヌの著書「CONSCIOUSNESS AND THE BRAIN – Deciphering How the Brain Codes Our Thoughts(意識と脳 思考はいかにコード化されるか)」を読み、意識や情動は神聖な霊のようなものではなく、我々の身体、主に脳が作り出しているものに過ぎないと考えるようになったのです。

面白い本なので詳しくは読んでいただければと思いますが、著者はこの中で「グローバル・ニューロナル・ワークスペース」という理論をキーワードに、意識がいかにコード化されているかを解説しています。この理論では、意識が脳表面の「皮質」内で伝達される情報であり、脳全体でその情報を共有する神経回路網から生じるとしています。

ご存知の通り、視覚や聴覚などの感覚は神経系統での電気的な刺激によって発生しますが、簡単に説明してしまえば、それらと同様、思考や感情もコード化された「刺激(意識)」として発生しているということです。

では、人によって「面白い」「悲しい」「懐かしい」と感じる差異は何か?と考えた時、それは、前述の通り「経験」や「記憶」が原因となっていると言えます。この差によって、他の動物には無い何か特別な神秘的現象と捉えられるのが一般的な考えですが、先の映画の感想のように、「懐かしさ」などを感じるのは、脳内での「懐かしさ」を刺激する情報(経験や記憶)の有無に過ぎません。

「経験」や「記憶」は人により千差万別ですから、その組み合わせにより、「笑い」や「怒り」のポイントが異なったり、「共感」の発生源が変化します。つまり、無限の組み合わせによって「意識」や「情動」が発生している故に、AIなどでは作り出せない「神秘的な何か」のように捉えられるのです。

他の例えで言えば、食べ物や飲み物の「味覚」の差異を考えてみると少しわかりやすくなります。「味」は、舌の表面にある味蕾だけでなく、嗅覚を発生させる嗅細胞の「嗅覚受容体」からも大きな影響を受けていますが、この嗅覚受容体はおよそ400種類あり、これは人それぞれ同じ数存在しています。人により受容体の機能に差はありますが、全ての人間は400種類の嗅覚受容体によって匂いを感知しています。それに味蕾から得た情報が組み合わさり、最終的に「匂い」や「味」は、鼻や舌そのものではなく、先述の「皮質(大脳皮質)」によって認識されます。

私の好きなウイスキーには、その味を調整する「マスターブレンダー」と呼ばれる職業がありますが、有名なサントリーのウイスキー「山崎」のマスターブレンダーを務める片山修氏によれば、ウイスキーの微妙な味をイメージするために、ただテイスティングするだけではなく、時々山を散策し、自然の中で木々を見たり匂いを感じることで、味のイメージを脳内で作っているそうです。これもまた先述の「経験」や「記憶」の蓄積であり、それらの情報とテイスティングの蓄積によって、「ウッディーな」とか「奥深いまろやかさ」といった微妙な表現ができるようになります。多少の機能の差はあるにせよ、基本的な人体の共通構造を使いながら微妙な表現や感覚を生み出しているのは、それがマスターブレンダーだとしても「経験」や「記憶」が大きく影響しています。

同じように、映画を見て「懐かしい」「感動する」といった感覚は、(「神秘的な何か」から発生しているのではなく)ウイスキーのテイスティングのように、それまでに蓄積された「経験」と「記憶」が、皮質に伝達された情報の源となり発生していると考えられます。

ただ、その土台には遺伝子に組み込まれた情報も影響するため、危険を感じる状態を感知すれば、「経験」や「記憶」とは別に、身を守るための「怖い」という情報を伝達する、といったことも起こります。

学者でも研究者でも無い私が何故こんなことを言い出すのかと言えば、もちろん本の内容に感化されたこともありますが、自身の経験としてそのようなことを意図的におこなっていたからです。

私は、中学生の頃、家庭や学校の環境が原因で自分の感情を抑えるようになりました。初めは「悲しい」「悔しい」といったことをなるべく感じないようにしていましたが、その内に「笑う」ということも安易にはしないようになり、気がつけば、無口で一見機嫌の悪そうな人物になっていたのです。

これはどちらかと言えばポジティブな結果になったことの方が多かったのですが、その後は関わった環境が影響して、逆に抑制していた感情を表に出すよう無理やり変えた結果、中学生の頃の経験や記憶が礎となっているが故に、しばしば自分自身がコントロールできないようになってしまいました(そしてそれを再度自身で矯正しました)。

つまり一般的に「何か神聖なもの」である(と考えらている)「意識」が制御していると思われている、「悲しい」「悔しい」といった感情も、「経験」や「記憶」によって発生させないようにすることが可能で、それらは神秘的な何かでは無く、脳に蓄積する情報が発生させているに過ぎないことを体感的に知っていた、ということを本を読んで気づいたという話でした。

やや冗長な話になってしまいましたが、「意識」については未解明なことも多く、将来、「実は魂は存在した」「意識は霊が作り出していた」という科学的な発表があるかもしれません。

ただ、久しぶりに自己啓発的な話をすると、このような脳の構造を前提とすれば、何かする度に面倒と思ったり、人に対してやたら不満や怒りを感じたり、といった傾向は、自分の努力次第で、そうした意識を上書きすることが「ある程度可能」だと言えます。

「意識と脳」については、私の簡単すぎる説明では納得がいかないかもしれませんので、興味を持たれた方は、前述の著書をお読みになれば、意識や脳の理解だけでなく自身の意識改善にも役立つかと思います。


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