コンピューターの中身を知らない(知る必要の無い)世代

2021年9月29日
Android Gadget iOS iPadOS macOS Windows インターネット プログラミング・開発

皆さん、こんにちは。

THE VERGEというテック系のサイトに「FILE NOT FOUND」というタイトルのコラムが書かれていました。

簡単にコラムを要約すると、「ある学校でエンジニアリングの授業を教えていた学者が、その生徒達にコンピューターのファイルやフォルダの概念が無いことに気づいた」といった内容です(日本語で紹介された文章はGIGAZINEというサイトにありますので、英語が苦手な方はそちらで)。

これはスマートフォン世代が主流になった現在、ファイルやフォルダを直接的に操作することや、システムファイルに触れるといった行為が無くなったことによるものですが、こうした状況は「身近なツールとしてのコンピューター」という前提においては理想的な姿であり、ある意味、コンピューターが成熟してきたとも言えます。

つい数年前まではスマートフォンなども無く、デジタル的なことをやろうと思えばPCが必要でしたが、気軽に買える値段でもなく、「難しそう」というイメージも強かったことから、安易に使用するものではありませんでした。

とは言え、現在のスマートフォンの値段は決して安くありませんが(むしろPCよりも高価なものばかりですが)、携帯料金上乗せの「割賦払い」という形で販売価格から目を逸らすことに成功しているため、購入の敷居も低くなり、又、インターネットやスマートデバイス自体の高速化により、スマートフォンやタブレットは生活の一部として認識されるに至っています。

ほとんどの人は意識していませんが、iOSやiPadOS、もしくは、Androidといったスマートデバイス用のOSには、「UNIX」と呼ばれるシステムの流れを汲むOSが使用されています。

UNIXとは1970年代にアメリカのベル研究所で作られたもので、そのシステムの使いやすさから様々な亜種が生まれ、その後、マルチタスク、マルチユーザーといった機能が実装されたことで、主に研究機関やサーバーを中心に用いられるようになりました。

iOSやAndroidも、いわゆるUNIX系OSと呼ばれるオペレーティングシステムの子孫であり、現在のスマートフォンやタブレットの中では、ユーザーに気づかれることなく、UNIX系OSが動いているということになります。

iOSやiPadOSは同じAppleプロダクトであるmacOSから派生したものですが、そもそもmacOSは、スティーブ・ジョブズがAppleに復帰する以前に携わっていたNeXT社のコンピューターのOS、NeXTSTEPをベースにし、UNIX系OSの一つであるBSDの機能などが組み込まれて開発されたOSで、これらもUNIX系OSの一つと言えます。

Andoroidについても、UNIXから派生したLinuxというOSがベースとなっており、Googleを中心にモバイルデバイス用OSとして開発され、現在、多くのスマートデバイスに採用されています。

皆さんがスマートフォンでSNSに写真を投稿しようとアルバムを開き、画像を選択して投稿、という操作をすると、裏側では、それらUNIX系OSによってファイル操作が行われており、

# open photo_album
# select /User/yourname/photo/album/photo123.jpg
# post -instagram photo123.jpg

のようなコマンドが実行され、SNSへ写真が投稿されます(上記コマンドはわかりやすく表記しただけで適当です)。

つまり、上記の例で言えば、2行目のコマンドで「album」というディレクトリ(フォルダ)にある「photo123.jpg」というファイルを指定しているわけですが、スマートフォン上でこの操作を行なっている際、写真選択メニューを開いた直後に写真一覧が現れますので、視覚的にどの写真か判断して画面をタップするだけで、画像が保存されている正確な場所をいちいち指定する必要がありません。

普段、PCを趣味や仕事で使われている方にとっては、フォルダ構造やファイル操作が当たり前に感じるかと思いますが、スマートフォンやタブレットだけを使用してきた人にとっては、フォルダやファイルに直接触れることがありませんので、「ボタンやメニューを開けば写真が選択できる」くらいにしかイメージができなくなります。

iPhoneと同時に発表されたiPhone OS(当初はiOSではなくこの名前でした)は、初めからファイルやフォルダが見えない構造で、単にホーム画面上のアプリを起動しウェブサイトやメールを閲覧する、というだけの仕様でしたが、これは、ユーザーを混乱させる、あるいは、コンピューターを難しいと感じさせる「ファイル操作」を徹底的に排除し、タップやスワイプといった単純な操作でやりたいことを実現するという目標の上に作られたものだと思います。

スマートデバイスがすっかり普及し、多くの人がその操作を習熟したため、iOSやiPadOSには「Files」なるファイル操作のためのアプリが追加されましたが、これは、iPhoneやiPadを仕事で使う人が増えたため、macOSとの折衷案としてやむを得ず実装されることになったのでしょう。

なんにせよ、スマートフォンの普及は「コンピューターは難しいもの」というイメージを払拭し、「身近なツール」と思わせることに成功しました。

しかしながら、コンピューターを使った仕事が益々必要になっている中、専門的な分野に進もうとすればファイル操作は必要になるわけですが、OSがVR化し、メタバースのようなものが一般的になる未来を考えると、もっと直感的なOSが現れるようになるはずです。

少し昔にも、PCのデスクトップを机のような外観にしてファイルをしまったり出したりするユーティティーソフトがあった気がしますが、今後はVR空間に自分の部屋が現れ、引き出しからファイルを取り出したり、机の上に書類を重ねておくといった、直感的なOSが開発されることでしょう。

もしくは、BCI(Brain Computer Interface)と呼ばれる、脳直結型のコンピューターが一般的になれば、脳の司令によってファイル検索を行い、目的のデータが即座に開くといったOSになるかもしれません。


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