Lo-fiミュージック〜Lo-fi Hip Hopというジャンルの音楽について語ってみた!

2021年9月25日
音楽

皆さん、こんにちは。

音楽を聴く手段と言えば、つい数年前まで「CDを購入して聴く」という方法が主流でしたが、もはやインターネットで音楽を聴くことが一般的になり、CDなどのフィジカルメディアを購入して、それを音響機器やPCなどで再生するということは一般的でなくなりました。

又、PCだけでなくスマートフォンの爆発的普及とインターネット回線速度の高速化により、オンラインで高音質な音楽を楽しむということも当たり前の世の中になっています。

それだけではなく、広告収入型のYouTubeなどで(著作権法に違反したアップロードも含めて)音楽を「無料で」聴くことができるようになりましたので、もはや音楽にお金を払うという行為自体が「特別なこと」では無くなったように感じます。

もっとも、CDが売れなくなったからと言って音楽が儲からなくなったわけではなく、先見性のあるアーティストやプロデューサー、進取性のあるミュージシャンなどは、新しい音楽のあり方に適応し、有名無名を問わず成功している人もそれなりにいます。

そんな中、地味に拡大してきた音楽のジャンルが「Lo-fi」と冠された音楽です。

「Lo-fi」ミュージックが広まってからそれなりの時間が経っていることもあり、その言葉をなんとなく聞いたことがある方も多いと思いますが、「Lo-fi」や「Lo-fi Hip Hop」と呼ばれる音楽は、2000年代初頭からいくつかのジャンルの音楽の影響を受け、インターネットを主軸に波及していったジャンルです。

今では割とポピュラーな音楽となりましたので、どんなサウンドかは少しでも聴いたことがあれば想像が付くかと思いますが、基本的には、90年代Hip Hopのようなビートにシンプルなメロディーのループ、あるいは、ちょっとしたピアノやギターの演奏、意図的な音質低減、ノイズを加えたエディット、といった要素で構成されています。

なぜ、このような音楽が流行ったかと言えば、オンラインで音楽を聴くことが当たり前になるに従い、仕事や勉強などの合間に流す音楽として、展開が大きく派手なサウンドではなく、ずっと聞いていても気持ちのいい、邪魔にならない音楽が重宝されるようになったからです。

いまどきのわかりやすい言葉で言えば「作業用BGM」と言ったところでしょう。

単なる音のループだとかえって眠くなってしまいますが、「Lo-fi」ミュージックでは、気持ちの良い音色のループが心地よさを与えつつも、ビートがあることで脳を適度に刺激し、音質を落としたり、わずかなノイズを加えることで、環境音的な要素と耳障りにならない音場によって、作業に集中しやすい状態を作ったり、リラックスしたスペースに適した空間を作ることができるため、主にオンラインで配信されていることから手軽に聴くことのできるBGMとして好まれるようになりました。

「Lo-fi」や「Lo-fi Hip Hop」と言っても、そのジャンルの中で細かなサウンドのヴァリエーションがありますので、一口に上記のようなフォーマットが「基本形」だとは言えないのですが、これらのジャンルが認知されるに至る流れとしては、「Chillout」「Chillwave」と呼ばれるジャンルや、上述の90年代Hip Hop、あるいは、「Vaporwave」と呼ばれるジャンルの流れを汲みながら一大ジャンルとして成立していきました。

「Chillout」「Chillwave」と呼ばれるジャンルは、現在のLo-fiサウンドのように、BPM80〜100程度のビートに、心地の良いメロディーのループや、ジャズやアンビエントな雰囲気の演奏が乗せられた音楽です。

それらの音楽が「Jazzy Hip Hop」と呼ばれるJazzテイストの濃いHip Hopムーブメントなどと融合し、現在の「Lo-fi」サウンドへと収束していきます。

その流れの中で特に注目されているアーティストが「J Dilla」と「Nujabes」の二人です。

彼らは奇しくも年齢、誕生日、逝去した時期が同じで、「Lo-fi」の源流であるHip Hopシーンで活躍し続けたトラックメイカーでしたので、そのような偶然も一つの要因として、現在では「Lo-fi Hip Hipのゴッドファーザー」と呼ばれるような存在と捉えられています。

J Dillaは、90年代からHip Hopシーンで数多くのアーティストをプロデュースし、自身もメンバーであるSlum Villageや、その後のソロ作なども含め、沢山の名曲を残してきたトラックメーカーです。晩年は、LAを中心としたビートミュージックシーンと並行して、インストルメンタルのみのアルバムを制作/リリースしたりと、Lo-fiミュージックの制作スタイルの基礎を作った重要人物として崇められています。

そして、日本人のアーティストであるNujabesは、逝去後にその正体がある程度表に出てきたものの、生前は自分自身を晒すことを避け、人種や国籍を意識させずHip Hopというジャンルを基本に音楽を追求し続けてきた人物です。彼は、晩年に近づくに従い、単なるサンプリングによるトラックメイキングから脱却し、サンプリングか演奏なのか判別のつかないような自身の楽器演奏を盛り込んだり、新しい制作スタイルを積極的に取り入れることで、メロディックでユニークなトラックを残していきました。そして、海外でも放映されたアニメ「Samurai Champloo」のサウンドトラックがアニメ人気との相乗効果で注目され、現在の神格化された存在へと繋がっていきます。

ちなみに自慢ではありませんが、Nujabesは私の割と近い友人で、生前、特にSamurai Champlooのサントラがリリースされたあたりまでは、よく呑みにでかけたり、深夜にラーメン屋に誘われて街を徘徊したりしていた仲でした。誰も知らない情報ですが、彼の名作としてLo-fiシーンでも注目され続けている「Luv(Sic) Part2」などは、完成後、一番初めに私に聴かせてくれました。真夜中に食事に誘われた際、彼の車の中で「これさっきできたばっかりなんだけど聞いてみて」と言って聞かせてくれたことをよく覚えています。Samurai Champlooのサントラも、CDのサンプルができた直後、真っ先に私の家にやってきて手渡してくれました。

と、高名な友人を褒め称えていながら、彼の評判を下げるわけではありませんが、NujabesやJ Dillaが「Lo-fi Hip Hopのゴッドファーザー」と崇められていることには、常々、いささかの違和感を感じています。

なぜならば、彼らの音楽が現在のLo-fi Hip Hopに影響を与えていたり、サウンドや制作スタイルが今に引き継がれてはいるものの、今日、皆が知る「Lo-fi Hip Hop」とは似て非なるものだからです。

特にJ Dillaに関しては、逝去する以前のアルバムを何度聞き直しても、サウンドの雰囲気は、既存のJ Dilla Hip Hopサウンドをベースに制作したインストルメンタル中心のアルバムでしかありませんし、それ以前のトラックはもっとソリッドなビートで、上物のメロディー/サンプリングも現在のLo-fiミュージックのようなLo-fi感(意図的な音質抑制/劣化効果の適用)はありません(例えば、The Pharcydeの名曲「Runnin’」など)。

Nujabesのサウンドに関しては、逝去する1〜2年前のサウンドが、割と現在のLo-fi Hip Hopと共通する要素はあるものの、彼の作品が今のLo-fi HIp Hopと同一かと言えば、別物と感じます。

これらの意見は、あくまでリアルタイムに彼らの音楽を聴いてきた立場で、かつ、その背後にあるカルチャーなどを体験してきた上で言っていますし、「ゴッドファーザー」と言われる所以も理解した上でのコメントです。

又、もうひとつ違和感を感じるのは「Lo-fi Hip Hop」という名前についてです。Hip Hopという音楽、特に、今のLo-fi Hip Hopの源流となっている1990年代Hip Hopは、そもそも「Lo-fi」な音楽でした。それは、制作機材の制約で、サンプラーと呼ばれる機械に音を取り込む際、メモリーの容量が今では考えられないほど少なかったため、音質を下げざるえなかったという事情から曲が低音質=Lo-fiになっていたからです。この低音質な音が、逆にあたたかみを持たせたり、荒々しい雰囲気を与え、Hip Hopサウンドとして成立するようになったのが90年代Hip Hopなのです。つまり、Hip Hopはそもそも「Lo-fi」であったにもかかわらず、わざわざ「Lo-fi Hip Hop」と呼ぶことがおかしいと思い、未だにこのジャンル名には違和感を感じざるをえません。

これらトピックについては、私が制作・運営している「LO-FI STYLE(https://lo-fi.style)」というサイトで、Nujabesに近い立場だったミュージシャンにインタビューし、取り上げているテーマですので、興味を持った方はぜひ読んでみてください。

なんにせよ、新しい音楽やその呼び名に批判的になりたいわけではなく、この地味に拡大していった音楽が、私の音楽の原点にも近い音楽であると素直に受け入れ、新鮮な気持ちでこのシーンを積極的に探索している今日この頃です。


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