ROLAND SP-404 SX を購入してみた!

2020年12月16日
DTM Gadget 音楽

皆さん、こんにちは。

この数年の間に「Lo-fi HipHop」なる音楽を耳にするようになった方も多いかと思いますが、「Lo-fi」や「Lo-fi Hiphop」と呼ばれている音楽とは、HipHopのビートにジャズのフレーズやメロウなシンセをサンプリングした音を乗せ、ローファイな音質で作成したサウンドのことを言います。

私は、1980年代後半からHipHopを聴き続けていますが、そもそもこの「Lo-fi HipHop」という言葉に違和感があり、いまだこの言葉に馴染めません。

前述の通り「Lo-fi HipHop」は、ビートやメロディを敢えてローファイなクオリティに仕上げて作るわけですが、(私が思う)オーセンティックなHipHopはローファイなサウンドで成り立っていましたから、わざわざ「Lo-fi」と銘打つのが「可笑しい」と思うわけです。

最初期のHipHopは、DJが2台のターンテーブルを用い「ドラムブレイク」と呼ばれる、ある曲の間奏のドラム部分だけを繰り返し流し、そこにMC(ラッパー)がラップを乗せていくというスタイルでした。

それが一つの曲としてリリースされるようになると、リズムにドラムブレイクを録音したパーツを使用するか、似たようなノリの生ドラムを録音し、メロディはギターやシンセなどで演奏するという形で曲が作られます。

その後、色々な楽器が買えなかったり、あるいは、楽器演奏スキルが無い人がHipHopの曲を作ろうとしている中、「デジタルサンプラー」なる機材が注目されるようになります。

デジタルサンプラーは、カセットテープなどのアナログ録音機材とは異なり、デジタル的に音を録音し、それらの音を加工して再生することが可能な機材です。

そのデジタルサンプラーには「シーケンサー」という、音を小節毎に割り当て再生する機能がありますので、このデジタルサンプラー1台だけで曲を作ることが可能になります。

やがてHipHopのプロデューサーを中心に、この「デジタルサンプラー」が多用されるようになり、中でもE-mu社の「SP-1200」や、日本の機材メーカーであるAKAI社の「Sシリーズ」がHipHop制作の定番機材として用いられるようになりました。

コスト的な問題で高音質の機材が一般向けに売られなかったという事情もありますが、これらの機材は、音のクオリティを決める「ビットレート」が最大で「12bit」でしたので、80年代後半から90年代にSP-1200やS900といった機材で作られたHipHopの名曲達は、そもそもが「Lo-fi」だったのです。

ちなみにCD音質が「16bit」ですから、これらのデジタルサンプラーの音質は(若い方はあまりピンとこないかもしれませんが)カセットテープに録ったような音質程度と言えます。

又、デジタルサンプラーに取り込む際、多くはアナログレコードの音を用い、アナログのミキサーを通して録音することもあり、録音の過程で音質が減衰します。更には、サンプラー内でビットレートを12bit以下に落としたり、ある帯域をカットするなどして音質を変えますから、その「ローファイ感」は一層増していきます。

そういう流れもあって、今更、HipHopのビートに「Lo-fi」と冠してカテゴライズするのが「可笑しい」と感じているというのが、私の正直な感想です。

それから、時々、Lo-fi HipHopの源流が「Nujabes」や「J Dilla」といったアーティストだと言われますが、これについても妙な違和感を感じます。

「Lo-fi HipHop」のサウンドスタイルからすると、Nujabesのサウンドがそれに近いことは理解できますが、J Dillaについては、逝去するまで単に90年代から彼のスタイルを変えずに制作し続けていただけですので、何故、わざわざJ Dillaの名が上がるのかわかりません。むしろ、2000年代以降は、機材がアップグレードしたからか、90年代にプロデュースした曲と比べてハイファイになっているようにすら感じます。

知名度はJ Dillaの方が上ですが、他の同世代アーティストの名前を挙げるならば、MF DOOMの方がローファイなサウンドを作っていますし、歌やラップ無しのInstrumentalなトラックも沢山リリースしています。あるいは、Lo-fi界隈からもリスペクトされているかと思いますが、PeteRockなどの方がJ DillaよりもLo-fi&Jazzyサウンドで言えば本家じゃないでしょうか。

と、新世代Lo-fi界隈をDisするようなコメントになってしまいましたが、この「Lo-fi」を牽引した世代は主に1990年代後半〜2000年代生まれの方々ですので、HipHopの源流がLo-fiサウンドであるということとは別に、その制作/プレイスタイルから「Lo-fi」と銘打ったのかとは思います。

又、2000年代にはHipHopがメインストリームの音楽になり、サンプルクリアランス(サンプリング元ネタの著作権のクリア)が厳しくなったことや、DTM環境の一般化と高機能化でリッチな機材での制作が増えましたので、「Lo-fi」世代にとってのHipHopは、EDMなどと同様にハイファイな音楽だったことも理由の一つでしょう。

前置きが長くなりましたが、掲題の「ROLAND SP-404 SX」は「Lo-fi」ミュージックにとっての神器と位置付けられています。

「SP-404 SX」は、そのコンパクトさ、そして、プリセットされたエフェクトが「Lo-fi HipHop」な曲を作るのにうってつけであったことから、新世代の人々に愛用されるようになりました。

その背景には、LAでスタートした「LOW END THEORY」のようなクラブイベントや、YouTubeを中心に静かに拡大した「Lo-fi HipHop」ムーブメントがあります。

「LOW END THEORY」周辺のアーティスト達は、HipHopから派生したTrapやHipHopをベースとした実験的サウンドを奏でるために、SP-404やその前身であるSP-303などをLIVEで使用し、YouTubeで発信する「Lo-fi」アーティスト達はSPシリーズを定番機材としてこぞって使い始め、やがて、それらの流行がSP-404のヒットへと繋がりました。

私自身は趣味程度にDTMソフトや音楽機材を触っている程度ですので、そうしたムーブメントで活動しているアーティストには、ただただ敬服するばかりですが、この「SP-404」だけは、どうしても食指が動きませんでした。

というのも、写真を見ていただけばわかる通り「デザインがイマイチ」なことが最大の理由で、少し前に購入したMASCHINE MK3などと比べると、明らかにそそられる見た目をしていません(少なくとも私は)。

ところがYouTubeでSP-404を使ったライブなどを見ていると、そのコンパクトさ、バッテリー単体駆動できる可搬性、フィルターの使いやすさや効き具合から、愛用者が多いことに納得するようになり、動画を見るたびに「使いたい意欲」が増してしまったため、デザインについては目を瞑り購入するに至った次第です。

パッドについてはMASCHINEやMPCと比べるとだいぶ硬いのでフィンガードラムには向きませんが、予めサンプルをセットしてのプレイや、最大の売りであるフィルターを使うにはもってこいの機材です。

MASCHINE MK3もだいぶ操作に慣れてきましたので、SP-404 SXを相棒に、少しでも使いこなせればと思います。

見た目についてはカバー(Skin)が売られていますので、それで文字通りカバーしようと思いますが、次回製品がアップデートされる折には、ボタンに印字されたフォントや、フィルター部分の丸いディスプレイなどは、同社のMC707のような洗練されたデザインにアップデートしてほしいですね。


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