皆さん、こんにちは。
ドイツの生物学者であるヤーコプ・フォン・ユクスキュルの著書に、1934年に記した「生物から見た世界」という作品がありますが、この本には、「環世界」という説を基に、生物がどのように環境を知覚し知覚によって生物がどうやって世界を捉えているのか、といったことが書かれています。
詳しい内容は本を読んでいただければと思いますが、「環世界」とは、主体である生物が持つ器官を「知覚器官」「作用器官」と捉え、知覚器官が受け取った客体を作用器官が認識するといった「機能環」で表す世界のことを言います。
「よくわからないよ?」と思われるかもしれませんが、簡単に説明すれば、主体である虫が餌から匂いや温度のような刺激を受け取り、その刺激を持つ対象である客体を餌とみなすといった、一連の構造(この場合は感覚を通じてつながる虫と餌の関係)のことです。
この「環世界」を軸に、生物の見える世界を考えると、同じ情景を目の前にしていても、人間が見えている世界、鳥が見えている世界、ハエが見えている世界、それぞれの知覚できる範囲が異なります。
もちろん「備わっている感覚器官が異なるから」というのが単純な理由ですが、それ故に、例えば、鳥やハエは、テーブルの上の肉は見えていることになりますが、冷蔵庫や電子レンジは存在していないと同じことになります。
それは、物理的な対象が存在しているかどうかというよりも、鳥やハエにそれらを知覚するための機能が無いからであり、冷蔵庫や電子レンジが知覚対象になり得ないためです。
なぜこんなことを引用しているのかと言うと、この「環世界」の考え方が、これまでにも何度かお話している「心理的盲点」というトピックに共通していると感じたからです。
「心理的盲点」とは、自己啓発界隈などでは「スコトーマ」とも言われ、必要としない情報を文字通り盲点に隠してしまう脳の性質を指した言葉ですが、私たちの目の前にあるモノが視野角に入っていたとしても、目を通じて脳に入った情報が大脳辺縁系によって「不必要」と判断された場合、それらは「無かったこと」にされてしまいます。
「環世界」の考え方では、そもそも生得的な器官に知覚できる差があるわけですが、これを比喩的に考えれば、同じ環世界を持つ人間でも、目の前の情報が「不要」とみなされてしまえば、極端な話、鳥やハエのように自身の環世界は狭くなってしまいます。
以前の記事に書いた「心理的盲点」の話では、通勤・通学路のような毎日通っている道でも、いつもそこにある看板や標識に気づかないことがある、といった話をしましたが、先の「生物から見た世界」にも、「なじみの道」という似たような話が書かれています。
その章の内容は、知らない道をその土地に詳しい人に案内してもらう際、案内人は案内される側が気づかないような周りのものを「道しるべ」として認識することができる、という話ですが、道端にある何気ない木や石も、その道を使う人にとっては重要な情報であり、それに気づくことができなければ道に迷ってしまうことになります。
道端の石や木は、それ自体大した意味を持たないかもしれませんが、どんなモノであっても、それ自体が持つ「重要性」に気づくことが無ければ、一生それは無価値なモノであり続けます。
「そんなの当たり前じゃん?」と言う話ではありますが、単なる道端の石だと思っていたものも、よく近づいてみればすす汚れていたダイヤの原石ということだってありえるかもしれません。
あるいは、毎日すれちがっていた近所の人にふとした時に気づいて挨拶をして、それがきっかけで大きなビジネスになるということだってありえます。
いずれにせよ、自身の「環世界」が広ければ広いほど、吸収できる情報は多くなり、つまりは、目の前にあるモノやコトの価値を見抜く力を得られるようになります。
その「環世界」を広げるために必要なのは、「多くのことに触れること」「知識を増やすこと」の二つです。
沢山のモノやコトに触れる経験が多ければ、そのモノやコトの重要性にいち早く気づくことができ、沢山の知識を備えていれば、様々な視点から物事の価値を見定めることができます。
よく「人間の脳は一部しか使われていない」などとも言いますが、私たち人間は、多少の性能の差こそあれ、ほぼ同じように機能する脳や感覚を備えています。
その脳や感覚をどれだけ活用できるかは、自身の経験や知識の蓄積であり、それらの蓄積された要素をいかに回転させるかがキーになります。
インターネットの大情報時代、ネットに溢れる情報もリアルからでは得られない沢山の知識が詰まっていますが、今の所、私たちが生きているのは、SF映画のようなヴァーチャルに住む世界ではなく、リアルな物理的世界です。
多くのリアルな体験と知識を積み重ね、感性を研ぎ澄ませば、自身の「環世界」は広がり、成功へのアイデアが目の前に湧き出てくることでしょう!
この「環世界を広げて見抜くアイデアの源泉!」は、また、本ブログで掘り下げていきたいと思います。